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電源三法やめますか、それとも人間やめますか

福島の原発事故から2ヶ月以上が経ち、事故当時の情報も耳にする機会が増えてきた。
それらニュースに思い立ってはキーボードを叩こうとするのだが、あうだこうだと考えたり調べたりしている側から、更なる新情報が飛び交ったりするので、ブログを更新するタイミングをなんだか失っている。
加えて、今も予断を許さない福島原発の存在によって、ヴィヴィッドな反応ばかりが目や耳についてしまい、一体、この国はいつになったら思慮の富んだ社会となりえるのか、随分気の遠くなる思いがして頭が痛くなってくる。
本来、原発事故の本質的な問題を考える上では、そもそも原子力発電所の計画が始まった原点まで遡って見直していかなければ、解決の道を進んでいくことはできないと考えるのだが、未だその入り口にすら立てていないように思えるのは私だけであろうか。

化石燃料に取って代わるエネルギーや地球温暖化対策におけるクリーンエネルギーの象徴のように言われている原子力発電だが、時系列で考えれば、そんなものは後付けのまやかしであることは一目瞭然だ。
現存する原発の大半は1980年代までに建設されたもので、エネルギー問題や地球温暖化が注目される前から既に多くの原発が造られており、それは即ち、別の理由が存在していたからに他ならない。

日本での原子力発電の計画は1950年代から始められ、その発展に心血を注いでいたのが、当時、読売新聞のオーナーであった正力松太郎と後の総理大臣となる中曽根康弘の二人だ。
彼等が原子力に大きく関わっていった理由は、軍事転用目的からCIAの陰謀論に至るまで諸説があるものの、少なくともアメリカの強い意向を受け、原子力推進へと動いていたと言われている。
そうして、1955年に原子力基本法が制定されると、電力会社も加わって原子力発電の開発が始められる。
更に、1960年代に入って原子力発電の本格的な商用利用がスタートし、かの田中角栄が総理大臣になると、いわゆる電源三法と言われる補助金制度が設けられ、原発の建設が積極的に推し進められるようになっていった。
つまり、アメリカ、政治、メディア、電力会社による権力と多額の札束によって、原子力発電は産声を上げ、肥大化していったことになる。
そして、今回の原発事故を巡るアメリカ、政治、メディア、電力会社の対応は、50年経った今も、その構図が何ら変わっていないことを我々に映し出してみせた。

特に象徴的だったのが、老朽化した設備の上に年代と形式(メーカー)の異なる原子炉をいくつも抱えていた福島第一原発の実態であり、そのことは、そのまま今回の原発事故の被害を増大させた大きな要因に繋がっていったと考えられる。
事態が急速に悪化していく中で、製造メーカーが異なる原子炉それぞれの事故の状況を把握し、科学的な分析や対策を講じて全ての原子炉を一様に制御することなど、ほとんど不可能に近いと言える。
そもそも福島原発を操業していた東京電力には、発電所を運転するノウハウしか持ち合わせておらず、今回のような事故がひとたび起きてしまえば、原子炉の構造を知る技術者の知識や経験を欠いた状態で、迅速かつ適切な対応を望むのは土台無理な話だったのだ。
今にして思えば、事故が発生した時点で、東電の対応能力はすでに限界に達していた可能性が高かったと言わざるを得ない。

ではなぜ、そうしたリスクをまったく鑑みずに、同じ発電所内で複数の原子炉をこれまで増設してきたのか。
言い換えれば、原子力発電所の数はわずかに全国18箇所(地域で絞ればその数は更に減る)しかないにも関わらず、合計54基もの原子炉(建設中は除く)が、存在しているのか。
その答えは、前出の電源三法と言われる補助金制度にあったと考えられる。
地元自治体が次々に原子炉を造らずにはいられない、禁断の果実とも言えるからくりが、電源三法には隠されているからなのだ。
電源三法(でんげんさんぽう)
電源開発促進税法、特別会計に関する法律(旧 電源開発促進対策特別会計法)、発電用施設周辺地域整備法の総称である。これらの法律の主な目的は、電源開発が行われる地域に対して補助金を交付し、これによって電源の開発、すなわち発電所の建設を促進し、運転を円滑にしようとするものである
ウィキペディアより
いわゆる電源三法とは、原発を建設する為に、候補地となる自治体をおびき寄せる甘い蜜を法制化したものだ。
発電所完成の前後約10年の計20年間に渡って、実に約1,000億円ものお金が自治体に落ちる仕組みになっていて、財政や雇用の厳しい過疎地の市町村にとっては、目が眩まんばかりの金額だ。
こうして、誘惑に負けたいくつかの自治体が後戻り出来ない禁断の果実を口にすることになる。
ついでに余談だが、田中角栄は、原発を誘致する予定の土地を買い占めて売り払い、多額の政治資金を稼いだと言われている。まさしく元祖土建政治家と言われる所以だ。
で、話しを戻すが、自治体からしてみると禁断の果実を口にして終わりという訳ではない。
当初、税収の高かった原発による固定資産税は、原価償却によって年々目減りし、交付金も建設後約10年を境に減額となり、自治体に入ってくるお金が激減する仕掛けとなっているのだ。
こうなると、原子炉を1基許してしまえば後は同じと言わんばかりに、補助金目当てに2基目を造り、また補助金目当てに3基目を造るといったように、まるで禁断症状で何度でも麻薬に手を染める薬物中毒者の如く、自治体は建設を許可し続け、原子炉の数だけが次々と増えていくのである。
ちなみに、こうした人を垂らしこむ法律を作ってまで、原発を推し進めている国は日本しかない。
尚、この電源三法に関しては、2004年の中国新聞の特集記事がわかりやすく取り上げていたので、是非参照いただきたい。

中国新聞 原子力を問う より
http://www.chugoku-np.co.jp/kikaku/nuclearpower/japan/040509_02.html

そもそも、原始力発電所はエネルギー供給を目的とし、なにより安全性を第一に計画的且つ大局的見地に基づいて建設されなければならいない。
しかし、現実には、自治体の弱みにつけ込み、原子炉の建設を増やすことが目的となるような、安全軽視且つ局所的な、歪んだ原子力政策がまかり通っていたのである
まさに、福島第一原発のように製造メーカーの異なる原子炉が乱立していることそのものが、自治体が場当たり的に原子炉を増設していったなによりの証左と言えよう。

さすがに、今回の事故で計り知れないリスクの大きさを思い知って、原発を考え直す地元自治体や地域住民も増えてきたとは思うが、未だに原発を肯定しようとする地元の自治体や住民がいることも事実だ。
しかし彼らは、電源三法が無かったとしても、果たして同じことが言えるのだろうか。
もし本当に原子力発電が必要ならば、電源三法など無くても原発は造れる筈ではないのか。
電源三法に関しては、今一度、考え直さなくてはいけない。
当ブログでは、歪んだ原子力行政に騙されることのないよう、今後の事態の推移を注意深く見ていくつもりだ。

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朱の盤

はじめまして。
非常に目の覚める記事で感服しました。
勢い余って
『第3回世の中昨今川柳...モバ☆コン 川柳コンテスト』
http://mbcn.jp/RwaUZO17_index.php?head_code=&contest_id=59

に「自治体を/シャブ漬けにする/電源三法」という川柳を応募するにおいて、貴ブログのこの記事を参考、抜粋して、拙川柳のコメントとしてしまいました。(その旨は拙川柳コメント欄に記載しております)
事後報告になりまして、誠に申し訳ございません。(モバ☆コンへの拙川柳の反映は05/27以降になるかと思います)

これからも貴ブログのますますの発展を願っております。
by 朱の盤 (2011-05-26 09:17) 

伊賀篤

始めまして。運転が停止された「浜岡原発」から40km程の場所(浜松市浜北区)に住み、政治思想は【リベラル左派のアクティブ市民】を目指す、43歳のエンジニアです。

私も、電源三法は、廃止して欲しいですね。

地元自治体には「交付金」が降りても、実際に(今回の様な)事故が起きた時に、被害を受ける周辺自治体には、何のメリットもなく、同じ被災者の中でも「交付金を受けてきたクセに被害者ぶるな」といった差別を持ち込むものであり、地元の御前崎町では、廃炉を求める訴訟を起こした市議(共産党)を中心に、原発に頼らない町つくりに、まだ微力ながら…取り組んでいます。
http://blue.ap.teacup.com/nozomi/118.html

初めて訪問させて頂きましたが、貴ブログの、本記事には、勉強させて頂きましたので、今後、私の拙ブログで記事を書く際には、参考にさせて頂き、出典としてリンクを貼らせて頂くかもしれませんが、今後とも宜しく御願い致します。

尚、私は某党に所属してますが、一党員に過ぎず、某党への【批判記事】も、拙ブログ(URL参照)の他の記事では行なっています。
(我が党は、まぁ左派の中の困ったチャンですね)
by 伊賀篤 (2011-05-26 11:13) 

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