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誰様のNHK? NHKスペシャル「女性たちの貧困」を見て

放送後、かなりネットでも話題になったようだけど、偶然にも深夜に再放送を見る機会があったので気になったことを書き記しておく。

NHKスペシャル 調査報告 女性たちの貧困 ~"新たな連鎖"の衝撃~
= 2014年4月27日(日) NHK総合 =
10代20代の女性の間で深刻化する貧困の実態を描いた今年1月のクローズアップ現代「あしたが見えない」。放送後、番組サイトが異例のページビューを記録した。通常8千程度のページビューが、60万を超えたのである。そして、寄せられたのは「他人事では決してない」という切実な声だった。いま、若い女性たちの間で何が広がっているのか。取材を進め見えてきたのは、親の世代の貧困が、子の世代へと引き継がれ、特に若い女性たちに重くのしかかるという“現実”だった。番組では、厳しい生活にあえぐ若い女性たちの知られざる実態のルポを通して、“新たな貧困”を見つめていく。
番組HPより

で、番組を見ながら終始、違和感のようなものを抱きながら見ていたんだけど、それと同時に、怒りにも似た憤りを感じている自分がいた。
ただ、その憤りが何から来るものなのかが、自分では今ひとつよくわからず、なんとなくもやもやしていたんだけど、下記のネット記事を読んで合点がいった。

NHKの2番組に批判殺到、なぜNHKは社会保障の問題点を批判できず、世間とズレる?

NHKの2つの番組がインターネット上などで話題になっている。
1つ目は4月27日放送のテレビ番組『NHKスペシャル 調査報告 女性たちの貧困~“新たな連鎖”の衝撃~』(NHK総合)だ。同番組は、ネットカフェで暮らす家族(母と14歳と19歳の姉妹)や、病気で収入の少ない母親を含め家族4人の生計を月8万円のアルバイト料で支える19歳の女性など、貧困状態にある女性たちの現実を明らかにした。
 生活保護問題対策全国会議事務局次長である司法書士の徳武聡子氏は、自らのブログの中で『NHKはなぜ生活保護のことを伝えないのか~NHKスペシャル「女性たちの貧困」を視て』と題し、NHKの番組づくりに疑問を呈している。
「(番組に登場した)たいていの家庭が、生活保護を利用できる(制限以下の)所得であるように思える。NHKは、なぜそういうことを伝えないのだろうか。(略)もし、最低生活費以下で生活しているのなら、本来は生活保護を利用できるはずだ。生活保護の利用に至ることなく貧困に陥っていると、少なくとも、そこまで放送しなければならないんじゃないのか」と、行政の責任についての視点が完全に抜け落ちていると指摘する。
2014年5月9日 ビジネスジャーナル

要するに、違和感や憤りを感じていたのは、番組で取材されていた彼女達の境遇に向けられたものではなく、番組の演出に対して抱いていたものだったのだ。
番組では、彼女達がいかに困窮しているかということの演出に多くの時間が割かれており、その背後関係や問題点に触れられるようなことはほとんど無いに等しかったのである。
要は、取材対象者が、まるで悲劇のヒロインかの如く見えてしまうような、視聴者の感情に訴える演出が図られており、彼女達が貧困に陥った原因や、その貧困に対してセーフティネットが機能していない点などは、ほとんど描かれることは無かったのだ。
よって、恐らく多くの視聴者は、彼女達の境遇に涙し、社会に対して憤りを覚えた一方で、自分たちの境遇に安堵し、もしくは彼女達のような境遇に陥らないように頑張ろう、というような感情以上の感想を抱くことは出来なかったのではないだろうか。
そんな訳で、貧困という社会問題を扱うには、皆様のNHKにしては、あまりに視野が狭く、お粗末な番組だったと言わざるをえない。
結局のところ、貧困に対する同情や恐怖心を視聴者に煽っていただけの番組でしかなかったのだ。

自分が、この番組を見ていて大いに疑問を感じたのは、風俗店で働くことやネットカフェでの寝泊りが、まるで現代のセーフティネットであるかのように番組上では語られていて、本来あるべき行政や地域支援によるセーフティネットの存在が、どこかへ消えたまま番組が進行していったことだ。
貧困という深刻な社会問題にも関わらず、彼女達の惨状を、さも悲劇のヒロインを扱うようなストーリー仕立てで描いていく様は、まさに、民放が視聴率欲しさにやるような低俗な演出でしかなく、果たして、公共放送であるはずのNHKが、そうまでして視聴者の感情を煽る必要があったのかは甚だ疑問である。
彼女達の惨状を映し出すことよりも、その惨状に対して、本来のセーフティネットが機能していないことのほうが、遥かに大きな問題だと番組スタッフは考えなかったのだろうか。
実際、放送の中でも、取材で取り上げられていた、ネットカフェで生活する少女の姉妹が、その後、保護施設に入所したとのテロップが付け加えられていた場面があり、恐らくは再放送の時点でなんらか事態が動いて加えられたテロップのように見受けられたものの、むしろのその経緯を含めた、セーフティネットとの関わり方にこそ、スポットが当てられてしかるべき話なのではないかと強く思った次第だ。

これは、以前にNHKが取り上げて話題になった「孤独死」の時にも感じたのだけど、センセーショナルな話題性を提供することに主眼が置かれているような番組作りが透けて見え、違和感を抱かざるをえない。
本来、その背景や問題点を追求し、解決や改善に向けた道筋や課題を示していくことが、公共放送に課せられた役割であり、まさに、公共の利益に叶う番組を作ってこそ、皆様のNHKのはずだというのに。

思うに、今回の番組での貧困問題の取り上げ方と、福島の原発事故による放射能被害の問題だったり、韓国のフェリー事故における責任問題などに、同質なものを見いだしてしまうのは自分だけだろうか?
いずれも感情的な話が先行することで、問題の本質が見過ごされてしまう様子が、どれも酷似しているとは言えないだろうか。
人々の感情や欲求によって動いていく社会ほど危険なものは無いと思う。
そういえば、どこぞの総理大臣が、押し付けられた憲法は嫌だと言って、声高に「戦後レジームの脱却」などと連呼している様など、まさに国民に対して情緒的に訴える扇動政治そのものだ。
憲法の論議に、押し付けられたかどうかなんてのは全く関係の無い話で、憲法そのものの是非について語れば済む話だ。
というか、そもそも安倍晋三が大好きな大日本帝国憲法にしても、アメリカの黒舟に脅されたことに端を発して制定された憲法な訳で、押し付けられた憲法を否定するのであれば、そもそも欧米に押し付けられて起きた明治維新、即ち日本の建国そのものを否定しなければならない話になってしまうんだけどねぇ(笑)

話が横道に逸れちゃったけど、今回のNHKの番組は、まさに客観性を欠いた扇動的な要素を孕んでいる危険な番組であったと言える。
前出のネット記事にもあったように、行政などのセーフティネットを無視した番組構成によって、我々に突きつけられるのは、自己責任、もしくは自助という救いようの無い言葉だ。
しかし貧困は、決して自己責任や自助でどうにかなる社会問題ではない。
というか、むしろ自己責任や自助ではどうしようもならないからこそ貧困が生まれるのであって、だからこそ、政治や行政などの公助による、貧困を救い貧困を生み出さない社会的なシステムが必要とされるのだ。
そもそも、世の中、自己責任や自助だけでやっていけるのなら、国家も行政も会社だって存在する必要のない話になってしまう。
そういった意味でも、公共放送が公助の視点を失った番組を作って放送した罪は重いと思う。

数年前に、民放のニュース番組やワイドショーなどで、生活保護費の不正受給や浪費している連中をやたら取り上げて、いわゆる生活保護バッシングなるものが生まれたのは記憶に新しいところ。
でもって、まさに、必死で働いている人々の感情を刺激したことは言うまでも無い。
しかし、これによって起きた事態は、本当に生活保護を必要している人々までが誹謗や中傷に晒されたり、生活保護の申請のハードルを高めてしまうなど、結果的にはセーフティネット本来の機能を損なわせるという本末転倒なものでしかなかったのだ。
今回の番組もまた、視点は違えど、それらと同質の問題を孕んでいる番組であることを、果たして、NHKの番組スタッフはどこまで理解出来ていたのだろうか。

最後に、去年、NHKのEテレで放送されていたハートネットTVという番組の内容を紹介しておきたい。

ハートネットTV シリーズ 貧困拡大社会 検証“生活保護”(2)
動き出した生活困窮者支援

= 2013年10月8日(火曜)NHK Eテレ =
大きな転機を迎えようとしている“生活保護”を、2回にわたり徹底的に検証する10月の「シリーズ貧困拡大社会」。
2回目のテーマは、「生活保護法改正案」とセットで成立が予想される「生活困窮者自立支援法」をめぐる動きについてお伝えします。
現在、日本に2千万人いるとみられる、生活保護を受けていない貧困に陥った低所得者。現在の制度では、こうした人々への公的な支援体制が不十分で、それが生活保護受給者の増加にもつながっているといわれています。
この秋の国会での審議が見込まれる「生活困窮者自立支援法」では、福祉事務所のある全国の1千あまりの自治体に、新たに総合的な相談窓口を設置し、生活相談や就労支援など、困窮者を包括的に支援する“第2のセーフティーネット”を作ることが目標とされています。
国は、平成27年の開始をめざすとしていますが、法案の成立に先駆け、早くも今年度、全国69の自治体でモデル事業がスタートし始めています。番組では、この取り組みの実例をいち早く取材。具体的にどのような支援の仕方が試みられているのかを紹介します。
その過程で、法律が出来たとしても、果たして全国一律の支援の質が確保できるのかとの指摘や、“貧困ビジネス”の温床になるのではないかとの懸念が示されるなど、さまざまな課題も明らかになってきました。前回に続き、スタジオに招いた専門家たちによる徹底討論から、困窮者支援のあるべき姿について考えていきます。
番組HPより

まさに公共放送ならではの丁寧な番組を作っていたNHKが一体どうして?
公共放送としての役割が、見失われつつあるのを感じずにはいられない。
しかも、それは、NHKの人間ですら気付かないうちに起きているのかもしれない。


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ゆるにゃん

平均年収1680万円のNHKがでっち上げたスペシャルですね!
「ネカフェ=貧困」と決めつけありきで番組を作っておる。
ネカフェ暮らしは7割が、女性だそうだ。しかしネカフェ暮らしの女は携帯電話を持ち、食事はほぼ外食!貧困なワケはない!
ネカフェ暮らしはそれなり金がかかる。ただネカフェは、ネット常時接続・ドリンク飲み放題・雑誌読み放題・シャワー付き・住民票も取れる。
ネカフェは、安く便利に暮らせる手段だ!
番組に出ていた親娘、親のパート代15万円と姉の10万円のバイト代の25万円で普通に安い家借りて暮らせるとは突っ込まないNHK<笑 
ハッキリ入ってバカ番組!こうゆう偏向歪曲報道に騙されな!
by ゆるにゃん (2014-10-27 04:09) 

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