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ロシアと日本を繋ぐもの

NHK BS1で深夜放送されている「世界のドキュメンタリー」という文字通り、世界各国で制作されたドキュメンタリー番組を放送している枠で、先週、ソチオリンピックに関連してロシアに関する特集シリーズをやっていて、その中の「モスクワ パンクバンドの反乱.」というイギリスで制作されたドキュメンタリー番組を見た。

モスクワ パンクバンドの反乱
公共の場でゲリラ的パフォーマンスを行い、反プーチンを訴えて逮捕されたモスクワの女性パンクロックバンド、“プッシー・ライオット”。世界中のメディアが注目した裁判の経過を取材し、現代ロシアで闘う女性集団を追う。サンダンス映画祭審査員特別賞受賞作品。 プーチン氏が、再びロシア大統領に着任した2011年8月。カラフルな覆面を被った若い女性のパンクバンド、プッシー・ライオットが結成された。彼女たちはフェミニストのアート集団。“独裁者”だとしてプーチン氏への批判や女性の解放を歌にして、モスクワ赤の広場などで活動していた。しかし、パンクロックや前衛的なパフォーマンスになじみが薄いロシアで、一般の人の理解を得ることは難しかった。 2012年2月、ある寺院で行われたわずか40秒間のゲリラライブが厳格なロシア正教の僧侶たちの怒りを買い、ナディア、マーシャ、カティアの3名が逮捕されてしまう。メンバーは不法侵入と秩序を乱した罪に問われるが、覆面を脱いだ彼女たちはロシア正教のプーチン支持に対する平和的な抗議を行ったのだと主張する。 拘束が長引くほど、権利と自由を訴える美しき女性たちに賛同する人々は増えるばかり。果たして裁判の結末は―? 独占インタビューと実際の裁判映像を交え、アートで社会を変えようとするフェミニストたちを取り上げた。
NHK番組HPより

マドンナが釈放を求めるコメントを発したり、世界的なニュースにもなっていたので、このバンドの存在は知っていたんだけど、それはロシア当局に逮捕されたからであって、実は、この番組では、逮捕される前から彼女達をちゃんと取材していて、その一部始終を今回、見ることができ、中々に興味深かった。
ちなみに、逮捕容疑は、モスクワの大聖堂でゲリラライブを行った「フーリガン行為」によるものらしいのだが、番組内では、その当時、聖堂内にいた人達に対して、ライブ行為で、妨害や危害を働いたとするニュアンスで伝えられていた。
で、結果、懲役2年の有罪判決が下されたのだけど、その後、控訴審でメンバーの一人が執行猶予処分になり、残り二人のメンバーは、オリンピック絡みとされる恩赦によって去年釈放となっている。



まぁ、主張は理解できるとしても、音楽的にも、そして、そのパフォーマンス自体も、あまりに時代遅れな感じがして、個人的には彼女達にさほど共感を覚える事はなかったのだが、それって、ただ単に民主化を含めて、色んな意味でまだまだロシアが時代遅れだからということなのか、それとも、あえて70年代パンク的なアプローチを試みているからなのかがよく判らず、その点だけは妙に気になってしまった(笑)
とはいえ、宗教施設でゲリラライブをやっただけで、2年の懲役を喰らってしまうんだから、やはり時代遅れの国としか言いようが無いことだけは確かだろう。
しかも、彼女達の公判には、何台ものテレビカメラとか、色んなメディアが入り乱れた騒然とした中で行われていて、被告の人権などお構いなしのさらし者の様相を呈していた一方で、逆にある意味、思いっきり開かれた裁判にもなっているという、なんかえらい混沌とした世界になっていて、まさにおそロシアそのもといった感じがした(笑)

正直、彼女達の主張にあるような不当逮捕とまでは言えないパフォーマンスだったと思うけど、プーチンの強権的な政治姿勢しかり、ロシア正教との蜜月ぶりなんかを見るにつけ、やはり、ロシアは本質的には反民主的な国家なんだなぁと改めて感じた次第。
その一方で、経済国としてグローバリズムの流れに乗っかろうともしている訳で、封建的な社会とグローバリズムがもたらす多様性との間で、ねじれまくった社会の歪を生じさせているのが、今のロシアなのだろうと想像してみた。
そういった意味では、プッシー・ライオットの出現は、今のロシア社会にとって必然的なことではあるのだろうけど、いかんせん70年代パンクのような、単なるアンチテーゼによる表現方法だけでは、社会の「歪」を訴える事は出来ても、「ねじれ」を訴えるところまでは、なかなか辿り着けないのではなかろうかとも思ってみた。

今の日本もそうだけど、例えば反政府や反体制を訴えていれば、共感を得られるほど単純な世の中ではない。
社会構造が複雑化し、様々な利害が絡み合う世の中で、皆それぞれに生きていたりする訳で、共通認識を見出すことが、難しくなってきていると言えるのではないだろうか。
かといって、特定のテーマや、細かいメッセージを表現してみたところで、多くの共感を得るのも難しいだろうし...
う~ん、表現者にとっては、伝えてたいことはあっても伝わらない、ある意味、もどかしい時代なのかもしれない。
そんな訳で、プッシー・ライオットに、パンクが形骸化してしまった妙な虚しさを感じずにはいられなかった。
ただしその一方で、彼女達の活動がネットを通じて世界各国に広がり、多くの支持を得るという、別のねじれ現象も引き起こしている訳で、尚且つそれがメンバーの恩赦にも繋がるという妙な因果関係を生み出している辺りは、今の時代ならではと言えそうだ。

そんなこんなで、歪まくって、ねじれまくっているロシアだけに、オリンピックを無事に終えることが出来るのか、かなり心配。
ゲリラライブなんて可愛いもんで、どこぞで爆弾がいつ爆発しても、おかしくはない状況なのだ。
でもって、それを権力で封じ込めようとすれば、ロシア政権に対する不満のガスも充満していく訳で、歪もねじれも益々大きくなっていくことだろう。

で、今回のロシアに関する一連のドキュメンタリー特集を見ていて感じたのは、決して海の向こうの出来事だとは思えなかったということ。
保守色を全面に押し出して強権的な政治を行ったり、宗教を政治利用してみたり...
って、どこぞの島国の総理大臣が、同じことをやっているじゃあ~りませんか!(爆)
なんか、ロシアとやたら外交関係を築いているのも、意気投合しちゃってるからなの?(笑)
そういえば、人権問題で欧米諸国の首脳がオリンピックの開会式を相次いで欠席する中、件の総理大臣は、自(国)家用ジェットで極東からプーチンに会いにソチまで駆けつけるらしい。
まさに、ボク達似たもの同士、人権なんて糞喰らえ!
美しい国、美しいボディを築いているプーチンさんは、ワタクチの憧れです!
ってか(笑)

つまりは、今のロシアの姿は、これからの日本の姿でもあるってことだ。
とはいえ、あちらは民主化が遅れている国で、こちらは民主化から逆行している国な訳で、似た国同士でも、風向きはえらい違い(笑)
そんな訳で、頭のネジが外れた人達のお陰で、ジャーナリスティックなドキュメンタリー番組がNHKで見られなくなるのも時間の問題だろう(爆)
それこそ、東京オリンピックが開かれる頃には、一体、日本の世の中はどうなっているのだろうか?
果たして、日本版プッシーライオットは現れているのだろうか?
今回の冬季オリンピックは、そんな複雑な思いを抱きながらの、テレビ観戦と相成りそうだ。

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